資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-08-24
スワップポイントの仕組み — 付与日数・3倍デー・業者ごとの単位差まで
FXを日をまたいで持つと発生するスワップポイント。「なんとなく毎日つくもの」と思っていると、水曜だけ3倍になっていたり、業者間で数字の桁が合わなかったりして混乱します。この記事は、スワップサヤ取り計算機(TOOL-001)のデータ自動取得を作る過程で国内9社の公表データを毎日突き合わせることになった経験から、スワップの「いつ・いくら」の仕組みを整理したものです。
結論
- スワップポイントは2通貨の金利差から生じる損益。ただし各社が独自に設定するため、金利差から計算した値と一致しない
- 付与は1日1回、ポジションをロールオーバー(日またぎ)した時に発生する
- 水曜→木曜の持ち越しで3日分まとめて付く業者が多い(理由はT+2決済)。ただし計上曜日は業者によって違う
- 業者の公表カレンダーの数字は「その日に付く合計」なので、付与日数で割らないと比較できない
- 「1Lotあたり」の通貨量も業者・通貨ペアによって1,000〜100,000通貨とバラバラ。比較は「1万通貨あたり・1日あたり」に揃えてから
仕組み: なぜ水曜だけ3倍なのか
FXのスポット取引は、約定した日から2営業日後に決済される決まりです(T+2)。ポジションを翌日に持ち越すことは、この決済日を1営業日先送りすること(ロールオーバー)を意味し、このときに金利差分の受け払いが発生します。
ここで曜日を数えると、水曜だけ特別な理由が見えます。
| 持ち越し | 決済日の移動 | 付与日数 |
|---|---|---|
| 月→火 | 水→木 | 1日分 |
| 火→水 | 木→金 | 1日分 |
| 水→木 | 金→翌週月 | 3日分(土日を含む) |
| 木→金 | 月→火 | 1日分 |
| 金→月 | 火→水 | 1日分 |
土日は決済が動かないので、その2日分の金利が水曜の持ち越しに前倒しでまとめて乗る——これが「水曜3倍デー」の正体です。祝日(円ペアなら日米の休場)があるとこのパターンは前後にずれます。
業者によって「何曜日に計上するか」が違う
ここからが実データを突き合わせて分かった話です。国内業者の公表スワップカレンダーを毎日取得して比較すると、多くの業者は水曜に3日分を計上する一方、木曜に計上する業者もあります(2026年8月時点、当サイトでの突き合わせによる確認)。自分が使っている業者がどちらの方式かは、公表カレンダーの付与日数の並びを1週間分見れば判別できます。
これが実務で効くのは次の2場面です。
- 業者間の比較: 同じ日の公表値どうしを比べると、片方だけ3日分で3倍に見えることがある。カレンダーの「付与日数」列を見て、必ず1日あたりに直してから比べる
- 自動取得・記録: スワップを記録する仕組みを作る場合、付与日数の扱いを間違えると特定の曜日だけ値が3倍/3分の1に化ける
「1Lot」の通貨量も揃っていない
もうひとつの落とし穴が単位です。公表スワップは「1Lotあたり◯円」の形が多いのですが、1Lotが何通貨かは業者・通貨ペアでバラバラです。2026年8月時点で公表ページを確認した範囲でも、
- 1Lot=1万通貨が主流だが、1,000通貨単位で公表する業者もある
- 同じ業者内でも通貨ペアによって単位が変わる(高金利通貨のメキシコペソ等は10万通貨単位、ハンガリーフォリントは10万〜100万通貨単位など)
という状態でした。スワップの高い・安いを比べるときは、「1万通貨あたり・1日あたりの円」に正規化してからでないと意味のある比較になりません。TOOL-001のランキングはこの正規化を済ませた値で計算しています。
金利差から計算してはいけない
「トルコリラの政策金利が◯%だから1日あたり◯円のはず」という計算は、実際の提示値とズレます。各社はカバー先の銀行やヘッジ方式に応じてスワップを独自に設定しており、同じ通貨ペアでも業者間で差があります。買いスワップと売りスワップも対称ではなく、受取side+支払いsideを足すと通常マイナス(その差が実質的な業者のマージン)です。金利差が正の通貨ペアで、買い・売り両方マイナスという提示も普通に存在します。
つまりスワップを使う判断(サヤ取り・長期保有・バックテストのコスト設定)では、理論値ではなく各社の実際の公表値・提示値を使うのが原則です。
実務でどう使うか
- **日をまたがない戦略ならスワップは損益に入りません。**気にする必要があるのは日またぎ以降です
- 日またぎする戦略では、買いと売りで条件が非対称になります。マイナススワップ側は横ばいでも時間とともに損失が積むため、保有が長い戦略は方向によって成立しなくなることがあります
- 逆にプラススワップ側の成績は価格変動と関係ない利益で水増しされて見えることがあります。検証ではスワップ由来の損益を分けて評価するのが安全です
- スワップの数値は業者・時期によって変わります。この記事の仕組みの部分は変わりませんが、実際の値は必ずその時点の公表値で確認してください
出典
- スワップポイントとは? — GMO外貨(T+2とロールオーバーの仕組み)
- スワップポイントとは? — みんなのFX(3倍デーの説明)
- スワップポイントとは? — OANDA証券(金利差と受け払いの構造)
- スワップポイント — 松井証券(各社独自設定である点)
- 計上曜日・付与日数・単位の業者差: 国内9社の公表スワップカレンダー/CSV/APIを2026年8月に突き合わせた当サイトの確認結果(TOOL-001の取得元と同じ)
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引を推奨するものではありません。