資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-09-01

週明けギャップを162週分測った — 半分の週は7銭、20週に1回は70銭超

週末ギャップと祝日で、週末に持ち越したポジションで何が起きるかを仕組みから整理しました。ただ、あの記事には数値をひとつも書いていません。

「損切りが効かないことがある」と言われても、どれくらいの幅なのかが分からなければ判断できません。そこを埋めます。

3通貨ペア・162週分を測りました。結果を一言でいうと、中央値は拍子抜けするほど小さく、裾は驚くほど長いでした。

結論

  • 週明けギャップの中央値は、米ドル/円で 7.2銭。半分の週はこの程度
  • ところが20週に1回は70銭を超える。3年間の最大は 2円04銭
  • 分布の裾が極端に長い。中央値の10〜30倍が普通に起きる
  • 複数の通貨ペアで同じ週に大きく飛ぶ。分散させても同時に効く
  • **方向に偏りはありません。**測り方によっては偏って見えますが、それは測定上の人工物でした(後述)

測り方

  • データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティック
  • 期間: 2023年8月25日〜2026年8月23日、162週
  • 対象: 米ドル/円、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドル
  • 週の切れ目: 前のティックから2時間以上あいたところで判定しました。曜日で切るとサマータイムで境界が動くので、空白時間で切るほうが頑健です
  • 価格: 中値((bid+ask)÷2)を使いました。理由は後述します

休止時間の中央値は48時間でした。

結果:大きさ

中央値75%90%95%最大
米ドル/円7.2銭16.537.170.7204.1銭(2円04銭)
ユーロ/米ドル4.7pips11.133.743.1127.7pips
英ポンド/米ドル6.1pips13.128.641.5102.3pips

**半分の週は、ドル円で7銭程度です。**これだけ見ると、週末持ち越しはたいした問題ではないように思えます。

問題は右側です。95パーセンタイルが70.7銭、つまり20週に1回はそこを超えます。1年に2〜3回の頻度です。

そして3年間の最大は 2円04銭でした。中央値の28倍です。

大きかった週

週明け米ドル/円ユーロ/米ドル英ポンド/米ドル
2025-10-06+204.1銭——
2025-04-07-145.9銭-65.7pips—
2025-02-03—-127.7pips-102.3pips
2026-01-26-99.9銭——
2026-03-09—-70.1pips-77.2pips

**同じ週が複数のペアに並んでいます。**2025-02-03 と 2026-03-09 は、ユーロもポンドも同時に大きく飛びました。

ドル全体が動いた週は、どのペアも同時に飛ぶ——当たり前に聞こえますが、「複数の通貨ペアに分散しているから安全」という前提を崩す話です。

方向には偏りがない(測り方を2回間違えた)

ここは正直に書きます。最初、はっきりした偏りが出ました。そして2回続けて誤った解釈をしました。

1回目:bidで測ったら72%が下方向

売値(bid)で測ったところ、米ドル/円は72%が下方向という結果になりました。

原因はすぐ分かりました。週明け最初のティックはスプレッドが平時の10倍前後に開いています(実測はこちら)。実際この計測でも、週明け最初のスプレッドの中央値は米ドル/円で11.8銭、英ポンド/米ドルで13.6pipsありました。

bidはその分だけ下に押されます。ギャップが機械的に下向きへ偏っていただけでした。

2回目:中値でも偏りが残ったので「トレンドだろう」と考えた

中値に直すと偏りは縮みましたが、米ドル/円は31.5%しか上に飛びません。そこで「この3年のトレンドが週末にも現れているのだろう」と解釈しました。

これも間違いでした。

3回目:境界から離したら、偏りが消えた

境界のティックそのものが怪しいのではないかと考え、測る位置を境界から離してやり直しました。

境界からの距離米ドル/円ユーロ/米ドル英ポンド/米ドル
0分(境界のティック)32.7%50.6%44.4%
15分37.0%51.2%37.7%
60分47.5%47.5%37.7%
240分(4時間)52.2%52.8%54.0%

**4時間離すと、3ペアとも約50%に戻りました。**符号つきの合計もほぼゼロになります。

つまりトレンドですらなく、境界前後の気配値が実勢からずれていただけでした。週末の境界はスプレッドが大きく開き、板も薄く、価格そのものが信用できない時間帯です。

**したがって「週明けは下がりやすい」とは書けません。**この記事では方向の話はしません。

大きさの数字はどう読むべきか

方向は使えませんが、大きさは使えます。ただし但し書きが要ります。

境界の価格で測っている以上、値動きとスプレッド拡大が混ざっています。「市場が7.2銭動いた」ではなく、「持ち越したポジションが直面する幅が7.2銭相当だった」と読むのが正確です。

実際にポジションを持ち越した人が向き合うのはこの数字なので、リスク管理の目的にはむしろ適切です。市場の変化量を知りたい場合には向きません。

実務でどう使うか

  • **中央値で判断しないでください。**半分の週は7銭でも、20週に1回は70銭を超えます。効いてくるのは裾のほうです
  • **損切り幅と比べてみてください。**損切りを30銭に置いているなら、週末のギャップはそれを普通に飛び越えます。損失が損切り幅で止まらない、というのはこういうことです
  • **複数ペアに分けても、同じ週に同時に飛びます。**分散の効果は、週末のギャップに対しては限定的です
  • 持ち越すかどうかは、頻度と幅の両方で考えてください。「めったに起きない」と「起きたら中央値の28倍」は両立します
  • ポジションサイズを決めるときはリスク逆算ロット計算機(TOOL-002)を使えますが、この計算機は週末ギャップを織り込んでいません。損切りが効く前提の計算です

データの見方(方法と限界)

  • 1つの配信元のデータです。ForexTester 6 の Advanced Data Feed で、その先の流動性提供元は公開されていません
  • 3通貨ペア・162週の観測です。他のペアや別の期間では分布が変わりえます
  • 境界の価格には、値動きとスプレッド拡大が混ざっています(上記)
  • **祝日をまたぐ3連休以上は分けていません。**休止時間が48時間を超える週も同じ扱いで集計しています
  • 「週の切れ目」は2時間以上の空白で判定しました。この閾値の取り方で件数がわずかに変わりえます

まとめ

  • 週明けギャップの中央値は米ドル/円で7.2銭。ユーロ/米ドル4.7pips、英ポンド/米ドル6.1pips
  • 20週に1回は70銭超。3年間の最大は2円04銭で、中央値の28倍
  • 複数のペアが同じ週に同時に飛ぶ
  • **方向に偏りはない。**偏って見えたのは境界の気配値の歪みで、4時間離すと消えた

公開済みの記事で「週末はポジションを持ち越すかどうかの判断が要る」と書いた部分に、ようやく数字が入りました。中央値だけ見れば小さく、裾を見れば損切りが効かない幅、というのがその実態です。

出典

※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引を推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。