検証ラボ ── 2026-09-04
ForexTester と StrategyQuant X は競合しない — 両方使って分かった役割の違い
「バックテストのソフトはどれがいいですか」と聞かれたら、答えは何をしたいかによります——というのは当たり前すぎる回答です。
ただ、StrategyQuant X と ForexTester の2つに限れば、そもそも比較する対象ではありませんでした。競合というより、用途が重なっていません。
両方を実際に使った立場で、何がどう違うのかを整理します。
結論
- StrategyQuant X は「戦略を大量に作って、統計的にふるいにかける」道具。人間が1本ずつ見ることは想定されていない
- ForexTester は「相場を1本ずつ見る」道具。時間を進めながら、自分で判断して手を動かす
- したがって代替関係にない。片方でできることが、もう片方ではできない
- データの扱いも別物。SQXは検証の入力としてデータを使い、ForexTesterは提示されるデータそのものが商品に近い
- 併用する場合、ForexTesterのデータを検証の材料として使うという組み合わせは成立する
何をする道具なのか
StrategyQuant X:大量に作って、大量に捨てる
SQXは戦略を自動生成します。売買ルールの部品を組み合わせ、遺伝的アルゴリズムで探索し、条件に合うものを残します。
第1期の検証では、延べ約150万本を生成しました。人間が1本ずつ眺める規模ではありません。
そのぶん、扱う問題も統計的なものになります。「150万本も作れば、偶然良く見えるものが必ず残る」という多重比較の問題が正面から出てきます。実際、第1期では1本も採用しませんでした。
**SQXが解いているのは「どうやって大量に作るか」と「どうやって大量に潰すか」**です。
ForexTester:1本ずつ、目で見る
ForexTesterは手動トレードの練習ソフトという位置づけです。過去のチャートを時間を進めながら再生し、自分で発注します。
自動生成はしません。人間が判断することが前提です。
そして今回、私はこのソフトを練習ではなくデータ取得に使いました。同梱の Advanced Data Feed が bid と ask の両方を持つティックを配信しているためです(取得手順)。
違いが最も出るところ
扱う単位
| StrategyQuant X | ForexTester | |
|---|---|---|
| 一度に扱う戦略 | 数十万〜百万本 | 1本(自分の判断) |
| 判断する主体 | 統計的な基準 | 人間 |
| 出てくる問題 | 選択バイアス、過剰最適化 | 主観、記録の残しにくさ |
**扱う単位が3桁以上違います。**これが根本的な差です。
データの位置づけ
ここも対照的でした。
**SQXにとってデータは「持ち込むもの」**です。データの取り込みは自分でやる必要があり、どこから取るか、どのタイムゾーンで揃えるかも自分で決めます。ソフトはその面倒を見ません。
**ForexTesterにとってデータは「付いてくるもの」**に近いです。契約に応じたフィードが配信され、そのまま使えます。
ただし付いてくるからといって中身が同じとは限りません。22銘柄・17億ティックを検査したところ、為替は連続分布でしたが、株価指数CFDはスプレッドの値が16種類しかありませんでした。銘柄によって性質が違います。
得意な問い
| 問い | 向いている道具 |
|---|---|
| この売買ルールに優位性はあるか | SQX(大量生成して統計的に検定) |
| 部品を増やすと成績は良くなるか | SQX(実測した) |
| この局面で自分はどう判断するか | ForexTester |
| 特定の時間帯のスプレッドはいくらか | ForexTester(データとして) |
| 相場の流れを体で覚えたい | ForexTester |
併用する場合
私の場合、ForexTesterを検証データの供給元として使い、分析は自作のスクリプトで行いました。
理由は単純で、17億ティックの集計はどちらのソフトの守備範囲でもないからです(集計の工夫はこちら)。ソフトが提供するのはデータと、そのソフト固有の分析機能までです。
この使い方は本来の想定とは違いますが、bid/askの両方を持つ長期のティックが手に入るという点で、目的には合っていました。
選ぶときの考え方
- 自動生成をしたいならSQX一択です。ForexTesterには自動生成の機能がありません
- 手を動かして練習したいならForexTesterです。SQXは人間が発注する道具ではありません
- **データが欲しいだけなら、目的に合うフィードがあるかを先に確認してください。**銘柄によって性質が違います
- **「どちらが優れているか」という比較には意味がありません。**やることが違うので、比べる軸が共通していません
価格については書きません。変わりますし、契約形態も複数あります。公式で確認してください。
限界
- 私の使い方に基づく整理です。どちらのソフトにも、私が使っていない機能がたくさんあります
- SQXは2026年8月時点のBuild 144、ForexTesterは6での話です
- ForexTesterはVIP(買い切り)契約での経験です。下位のプランでは取得できるデータが違います
- 他のバックテストソフトとは比較していません。この2つに限った話です
- 私はSQXでは第1期しか回していません。構成を変えた第2期の結果はまだ出ていません
まとめ
- SQXは大量に作って統計的に潰す道具。ForexTesterは1本ずつ目で見る道具
- 扱う単位が3桁以上違うので、代替関係にない
- データの位置づけも逆。SQXは持ち込む、ForexTesterは付いてくる
- ただし付いてくるデータの性質は銘柄で違う。使う前に検査したほうがよい
- 併用するなら「ForexTesterのデータを材料に、分析は別で」という形が成立した
「どちらを買うか」ではなく、「いま自分がやりたいのは生成なのか、判断なのか、それともデータが欲しいのか」を先に決めるほうが早いと思います。
出典
- ForexTester側の実使用: ForexTesterのデータはどこまで信用できるか / ForexTester 6 でティックデータを取り出す(当サイト)
- SQX側の実使用: StrategyQuant X(SQX)とは何か / SQXで延べ150万本の戦略を生成して、1本も採用しなかった話(当サイト)
- 大量生成に伴う問題: たくさん試して一番良いのを選ぶと、なぜ嘘の好成績が生まれるのか(当サイト)
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の製品を推奨するものではありません。仕様と画面は2026年8月時点の確認内容です。