資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-08-28

何を取引するといくら払うのか — 22銘柄を同じ物差しに乗せたら順位が入れ替わった

「米ドル/円は0.2銭、ビットコインは50ドル」——単位が違うものを並べても比べられません。

だからといって、比べる方法がないわけではありません。価格に対する比率に直せば、通貨も金も株価指数も同じ物差しに乗ります。

22銘柄・3年分のティックで実際に並べてみました。そして値動きの大きさで割ると、順位が大きく入れ替わりました。

結論

  • スプレッドを**価格に対する比率(bp)**に直すと、最安のユーロ/米ドル 0.28 から最高の天然ガス 22.8 まで、83倍の開きがあった
  • ところが1分あたりの値動きで割ると、この差は10.5倍まで縮む
  • 金は17位から7位へ上昇。よく動くので、スプレッドの広さのわりに割高ではない
  • ユーロ/英ポンドは8位から15位へ下落。ほとんど動かないので、狭いスプレッドでも割に合わない
  • ビットコインは20位から17位へ。「為替の18倍高い」は値動きを無視した見方だった
  • どの見方でも変わらないのは、ユーロ/米ドルと米ドル/円が最も安いこと

2つの物差し

比べるために2つの数字を作りました。

① 相対スプレッド(bp) スプレッド ÷ 価格 × 10000。「取引金額の何パーセントを払うか」に相当します。単位も価格水準も違う銘柄を並べられます。

② コスト比 相対スプレッド ÷ 1分あたりの値動き(絶対値の中央値、同じくbp)。「その銘柄が1分で動く分の何倍を、入るだけで払うか」です。

②が必要なのは、①だけでは動きの大きさを無視してしまうからです。1分で0.3bpしか動かない銘柄の0.9bpと、1分で3.6bpも動く銘柄の22bpでは、同じ「広い」でも意味が違います。

結果1: 生のスプレッドで並べる

順銘柄相対スプレッド(bp)
1ユーロ/米ドル0.28
2米ドル/円0.40
3ダウ(US30)0.52
4英ポンド/米ドル0.60
5ユーロ/円0.63
6豪ドル/円0.80
7米ドル/カナダドル0.88
8ユーロ/英ポンド0.93
9英ポンド/円1.00
10米ドル/スイスフラン1.04
…(中略)
17金(XAUUSD)1.62
20ビットコイン7.89
21銀(XAGUSD)8.35
22天然ガス(NG)22.81

**最安と最高で83倍。**通貨のほうが圧倒的に安く、商品と仮想通貨が高い、という素直な並びに見えます。

結果2: 値動きで割ると順位が変わる

同じ22銘柄を、コスト比で並べ直します。

順銘柄1分値動き(bp)スプレッド(bp)コスト比生の順位から
1ユーロ/米ドル0.4610.2750.60→
2米ドル/円0.5990.3960.66→
3ダウ(US30)0.7310.5220.71→
4豪ドル/円0.7770.8031.03↑2
5ユーロ/円0.5790.6321.09→
6英ポンド/米ドル0.5170.6021.16↓2
7金(XAUUSD)1.2821.6211.26↑10
8NZドル/円0.7721.1311.47↑4
9英ポンド/円0.6391.0031.57→
10米ドル/スイスフラン0.5461.0351.90→
11豪ドル/米ドル0.7051.4452.05↑4
12スイスフラン/円0.5931.2342.08↑1
13米ドル/カナダドル0.3710.8772.36↓6
14NZドル/米ドル0.7381.7482.37↑4
15ユーロ/英ポンド0.3440.9282.70↓7
16ユーロ/スイスフラン0.3711.0742.89↓5
17ビットコイン2.6417.8892.99↑3
18ユーロ/カナダドル0.4151.2523.02↓4
19ユーロ/香港ドル0.4701.4513.09↓3
20銀(XAGUSD)2.6228.3503.18↑1
21英ポンド/スイスフラン0.4731.6993.59↓2
22天然ガス(NG)3.60922.8126.32→

最安と最高の差は83倍から10.5倍に縮みました。

何が動いたのか

金:よく動くから、広くても割に合う

金のスプレッドは1.62bpで、生の順位では17位です。ところが1分の値動きが1.282bp——為替の2〜3倍動きます。

割ってみるとコスト比1.26で、英ポンド/米ドルより安く、ユーロ/円とほぼ同じ位置に来ます。17位から7位へ、10段階の上昇です。

ユーロ/英ポンド:狭いが、動かない

逆に落ちたのがユーロ/英ポンドです。スプレッドは0.93bpで生の順位は8位。悪くありません。

ところが1分の値動きが0.344bpと、22銘柄で最も小さい。狭いスプレッドでも、動く量に対しては割高になります。コスト比2.70で15位まで落ちました。

同じことがユーロ/スイスフラン(0.371)と米ドル/カナダドル(0.371)にも起きています。「スプレッドが狭い銘柄」と「コストが軽い銘柄」は別物です。

ビットコイン:18倍は言い過ぎだった

生のスプレッドだけ見ると、ビットコインは米ドル/円の約20倍です。数字として強烈で、「仮想通貨はコストが高い」という結論を出したくなります。

ただし1分の値動きも4.4倍あります。割るとコスト比2.99で、ユーロ/カナダドルやユーロ/香港ドルとほぼ同じ位置です。

高いことに変わりはありませんが、桁が違うほどではありません。

天然ガス:それでも最下位

天然ガスはスプレッドが22.8bpで、生の順位で断トツの最下位です。値動きも3.609bpと最大なのですが、割ってもコスト比6.32で最下位のままでした。

最安のユーロ/米ドルの10.5倍です。順位も差も変わりませんでした。

変わらなかったこと

**上位3つは動きませんでした。**ユーロ/米ドル、米ドル/円、ダウ。どちらの物差しでも最も軽い部類です。

流動性が最も厚い銘柄は、スプレッドが狭いだけでなく、動く量に対しても軽いということになります。

実務でどう使うか

  • **公表スプレッドの数字だけで銘柄を選ばないでください。**動かない銘柄の狭いスプレッドは、割に合っていない可能性があります
  • 比べるときは必ず価格に対する比率に直してください。「0.2銭」と「1.5pips」は、そのままでは比較できません
  • 値幅を取りにいく戦略なら、コスト比のほうが実感に近いはずです。1分で動く量の何倍を入口で払うか、という数字なので
  • ただしコスト比が小さい=有利、ではありません。この記事はコストの話であって、期待値の話ではありません。動く銘柄はコストも取り返しやすい一方、損失も大きくなります
  • **時間帯によってこの順位は変わります。**朝方は円がらみのペアがとくに悪化します(クロス円は割高は半分だけ本当だった参照)

データの見方(方法と限界)

  • データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed。2023年8月25日〜2026年8月23日、22銘柄・17億1,604万ティック
  • 1分値動きは中央値です。1分ごとに中値を1点拾い、連続する分だけを使いました(週末やデータの切れ目は除外)
  • **★ダウ・ビットコイン・銀のスプレッドは、市場が決めた値ではありません。**ダウは値の種類が16しかなく4つで99.6%、ビットコインは43%が$50.00、銀は45%が$0.030に張り付いています。この3つの順位は、業者が置いた水準の反映と読んでください。検査手順はForexTesterのデータはどこまで信用できるかにあります
  • 天然ガスは1分バーが80万本で、他(110万本前後)より少なめです。米国の先物時間しか動かないためで、その分だけ「動いていない時間」が除かれています
  • ビットコインは1分バーが154万本と最多です。週末も動くためです
  • 1分という時間軸の選び方で結果は変わります。長い時間軸ならコスト比はどれも小さくなります
  • 1つの配信元のデータです。絶対値は業者によって違います。読み取れるのは銘柄間の相対関係です

まとめ

  • 生のスプレッドで並べると最安と最高で83倍。値動きで割ると10.5倍まで縮む
  • 金は17位→7位。よく動くので広くても割に合う
  • ユーロ/英ポンドは8位→15位。狭いが動かないので割に合わない
  • ビットコインの「為替の18倍」は、値動きを無視した見方だった
  • ユーロ/米ドルと米ドル/円は、どちらの物差しでも最安

「スプレッドが狭い」と「コストが軽い」は違います。割ってみるまで分かりません。

出典

※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や取引を推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。