資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-08-25
スワップ「3倍デー」を5年8ヶ月分実測したら、水曜・3日分は6割しかなかった
「スワップは水曜に3倍つく」——FXを始めると必ず聞く話です。スワップポイントの仕組みで、その理由(T+2決済で水曜持ち越しが土日を含む3日分になる)を書きました。
ただ、あの記事を書いたとき気になったことがあります。**本当に「水曜・3日分」なのか。例外はどれくらいあるのか。**調べても、日本語でこれを実測した資料が見つかりませんでした。
そこで、国内店頭FX各社が公開しているスワップカレンダーから、5年8ヶ月分の付与日数を集計しました。
結論
- 集計対象は1,338営業日(2021年1月〜2026年8月)。うちまとめて付与された日は328件で、全営業日の約4分の1
- 「水曜・3日分」の標準形は328件中204件(62.2%)。残る37.8%は標準形から外れていました
- 付与日数は3日分が64.6%だが、4日分が22.6%、5日分・6日分もあり、最大は7日分
- 曜日は水曜が82.6%。水曜以外が17.4%(約6回に1回)
- 5日分以上の極端なケースは、すべてゴールデンウィーク前か年末年始に発生していた
- 計上する曜日の規約は業者によって異なる(水曜計上が主流だが、木曜に計上する社も実在する)
付与日数の分布
まとめて付与された328件の内訳です。
| 付与日数 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 2日分 | 31 | 9.5% |
| 3日分 | 212 | 64.6% |
| 4日分 | 74 | 22.6% |
| 5日分 | 5 | 1.5% |
| 6日分 | 5 | 1.5% |
| 7日分 | 1 | 0.3% |
「3倍デー」という通称は、最も多いケースを指しているにすぎません。3日分以外が35.4%あり、とくに4日分は22.6%と珍しくありません。
曜日の分布
| 曜日 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 月 | 15 | 4.6% |
| 火 | 20 | 6.1% |
| 水 | 271 | 82.6% |
| 木 | 10 | 3.0% |
| 金 | 12 | 3.7% |
水曜が中心なのは通説どおりです。ただし17.4%、およそ6回に1回は水曜以外でした。年ごとの「水曜以外」の割合は13.8%〜21.7%で、どの年も1割を超えています。
原因は祝日です。決済日を2営業日後に置く仕組みなので、日本や米国の休場が挟まると、まとめて付与される日が前後にずれます。ずれは例外的な事故ではなく、毎年20回前後は起きる通常運転ということになります。
極端なケースは時期が決まっている
5日分以上が付いた11件を並べると、はっきりした偏りが出ました。
| 発生日 | 付与日数 |
|---|---|
| 2021-04-27(火) | 6日分 |
| 2021-07-19(月) | 5日分 |
| 2021-12-28(火) | 5日分 |
| 2022-12-28(水) | 5日分 |
| 2023-04-28(金) | 6日分 |
| 2023-12-27(水) | 6日分 |
| 2024-04-30(火) | 5日分 |
| 2024-12-26(木) | 7日分 |
| 2025-04-30(水) | 5日分 |
| 2025-12-26(金) | 6日分 |
| 2026-04-29(水) | 6日分 |
11件中10件が**4月末(ゴールデンウィーク前)か12月末(年末年始前)**です。長期の休場を前にすると、決済日が大きく飛ぶためです。
最大の7日分は2024年12月26日でした。この日をまたいだポジションには、1日分の7倍のスワップが一度に発生したことになります。
実務でどう使うか
- マイナススワップ側のポジションは、4月末と12月末に想定の2倍前後を一度に支払うことがあります。「3倍デーだから3日分」と見込んでいると、資金計画がずれます
- 逆に受け取り側は、同じタイミングでまとめて受け取ります。ただしこれは前倒しで受け取っているだけで、期間全体の受取総額が増えるわけではありません
- カレンダーの「付与日数」列を見る習慣をつけると確実です。多くの業者が日数を公表しています
- 業者間でスワップを比較するときは、必ず日数で割って1日あたりに直してから比べてください(スワップポイントの仕組み参照)。日数がずれている日に比較すると、数倍の差があるように見えます
- 計上曜日の規約は業者ごとに違います。自分の業者がどの曜日に計上するかは、公開カレンダーの日数の並びを1〜2週間分見れば判別できます
データの見方(方法と限界)
正直に条件を書いておきます。
- 集計に使ったのは、国内店頭FX1社が公開している月次CSV(2021年1月〜2026年8月)です。付与日数の列をそのまま集計しました
- 基準は米ドル/円です。付与日数は通貨ペアによらず共通と考えられますが、確認したのはこのペアです
- **別の1社の公開APIで、重複する392営業日をクロスチェックしました。付与日数は392日すべてで一致(100%)しています。**したがって少なくともこの2社は同じ規約で運用しています
- ただしすべての業者が同じではありません。別の1社を確認したところ、同じ週の多日付与を木曜に計上していました。本記事の曜日分布は「水曜計上を採用している業者の実態」と読んでください
- 業者名は記載しません。特定の業者の優劣を論じる記事ではなく、業界全体の実態を把握するための集計だからです
- 過去5年8ヶ月の実測であり、将来も同じ分布になることを示すものではありません。祝日カレンダーが変われば結果も変わります
まとめ
- 「水曜・3日分」は標準形だが、実測では62%。残り38%は日数か曜日、あるいは両方が違った
- 4日分は22.6%と珍しくなく、最大7日分の例もある
- 極端な付与はゴールデンウィーク前と年末年始に集中する
- 業者によって計上曜日の規約が違うため、比較するときは必ず1日あたりに直す
スワップの数値そのものはスワップサヤ取り計算機(TOOL-001)で毎営業日自動取得しており、そちらでは付与日数で割った1日あたりの値を表示しています。
なお、ここで見てきたロールオーバーは「何日分つくか」という日数の面ですが、同じロールオーバーには「その瞬間に何が起きるか」という時刻の面もあります。そちらを2億2,218万ティックで実測したのがスプレッドが開くのは1日1時間です。スプレッドが1日で最も開くのは、まさにこの付与が起きる1時間でした。
出典
- 集計データ: 国内店頭FX2社が公開しているスワップカレンダー(月次CSV・公開API)。2021年1月〜2026年8月、米ドル/円基準、1,338営業日。業者名は記載しません(上の「データの見方」参照)
- T+2決済とロールオーバーの仕組み、および各社公式ページへの出典: スワップポイントの仕組み
- 値決め日がニューヨーク17時に切り替わる市場慣行: Value dates, market convention — London FX
- 各社の日次スワップ値: スワップサヤ取り計算機(TOOL-001)(毎営業日自動取得)
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引や業者を推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。