資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-09-15
同時に何本出るかで、動きは4倍変わった — 重要度のラベルより本数のほうが当てになる
経済指標は、同じ分にまとめて発表されることがあります。
米雇用統計なら、非農業部門雇用者数・失業率・平均時給が同時。米CPIなら総合とコアが同時です。何度も書いてきたとおり、これは分離できません。
分離できないなら、まとめて扱えばいいわけです。そこで別の問いが立ちます。
同時に出る本数が多いほど、大きく動くのでしょうか。
結論
- 本数が増えるほど、大きく動きました。1本の枠が平常の4.9倍、3本の枠は20.6倍です
- **重要度をそろえて比べても、差は残ります。**つまり「重要な指標ほど同時に出るから」だけでは説明できません
- 2通貨ペアで同じ形でした
- **重要度のラベルは下2段階が区別つかない**のに対し、本数は1本と3本で4倍の差をつけます。本数のほうが当てになります
- ただし4本以上では下がります(17.8倍)。理由は分かりません
何を測ったか
- データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティックと、同ソフトに付属する経済指標カレンダー
- 期間: 2023年8月25日〜2026年8月23日、米ドル/円とユーロ/米ドル
- 数え方: その分に出た指標名の種類を数えます(重要度1以上)
- 測るもの: 発表のその1分の値幅とスプレッド
- 対照: どの指標の前後30分にも入らない時間
交絡を切り分ける工夫
そのまま比べると、「重要な指標ほど同時に出る」という交絡が入ります。米CPIも雇用統計も3本セットです。
そこで優先度2を含む枠だけに絞った表も出しました。重要度をそろえたうえで、本数の効果だけを見るためです。
結果:本数が増えるほど動く
米ドル/円(平常時:スプレッド0.6銭、値幅1.8銭)
すべての枠(優先度1以上)。
| 本数 | 枠数 | 値幅 | 倍率 | スプレッド倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 1本 | 844 | 5.6銭 | 3.1倍 | 1.33倍 |
| 2本 | 235 | 15.4銭 | 8.6倍 | 1.67倍 |
| 3本 | 132 | 37.1銭 | 20.6倍 | 2.33倍 |
| 4本以上 | 45 | 32.1銭 | 17.8倍 | 2.00倍 |
重要度をそろえた比較(優先度2を含む枠だけ)。
| 本数 | 枠数 | 値幅 | 倍率 | スプレッド倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 1本 | 347 | 8.8銭 | 4.9倍 | 1.50倍 |
| 2本 | 182 | 19.4銭 | 10.8倍 | 1.67倍 |
| 3本 | 132 | 37.1銭 | 20.6倍 | 2.33倍 |
| 4本以上 | 44 | 32.1銭 | 17.8倍 | 2.00倍 |
1本 → 2本 → 3本で、およそ倍々になっています(4.9 → 10.8 → 20.6)。
ユーロ/米ドルでも同じでした。
| 本数 | 枠数 | 倍率(重要度をそろえた比較) |
|---|---|---|
| 1本 | 362 | 5.2倍 |
| 2本 | 250 | 10.7倍 |
| 3本 | 125 | 23.1倍 |
| 4本以上 | 44 | 19.8倍 |
2ペアで、ほとんど同じ数字が出ました。
重要度をそろえても差が残る
ここが今回の要点です。
そのままの比較では 3.1倍 → 20.6倍(6.6倍の開き)。重要度2を含む枠に絞っても 4.9倍 → 20.6倍(4.2倍の開き)が残ります。
つまり、「重要な指標ほど同時に出るから」だけでは説明がつきません。本数そのものが効いています。
理由を考えると筋は通ります。同じ分に3本出れば、3本分の新しい情報が一度に入るからです。ただしこれは推測です。
重要度のラベルより当てになる
重要度のラベルを測った記事では、こういう結果でした。
| 重要度0(低) | 平常の1.00倍 |
| 重要度1(中) | 平常の1.00倍 |
| 重要度2(高) | 平常の1.17倍 |
下2段階は区別がつきません。
一方、本数は 1本4.9倍 → 3本20.6倍 と、はっきり差をつけます。
カレンダーを見るとき、重要度の★を数えるより、その分に何本並んでいるかを数えるほうが当てになります。しかも目で見て分かります。
4本以上で下がるのは、分かりません
表を見ると、4本以上では17.8倍(ユーロ/米ドルで19.8倍)と下がっています。
理由は分かりませんでした。候補としては、
- 4本以上まとまるのは、個々は小さい指標の束(欧州各国のPMIなど)であることが多い
- 枠数が44〜45と少なく、たまたまの可能性
どちらとも確かめていません。分からないものは分からないと書いておきます。
実務でどう使うか
- **カレンダーで本数を数えてください。**3本並んでいる枠は、1本の枠の4倍動きます
- 重要度の★でフィルタするより有効です。ラベルは下2段階が機能していません
- 自動売買のフィルタに組み込むのも簡単です。その分の指標を数えるだけで済みます
- ただし平均コストという意味では、指標を避けても減りません。これは最悪値の話です
- 3本の枠の代表例が、米CPIと米雇用統計です
データの見方(方法と限界)
- 1つの配信元のデータです。ティックもカレンダーも同じソフトに付属するものです
- **本数は「その分に出た指標名の種類」**です。カレンダーの登録の仕方に依存します。別のカレンダーでは本数が違うはずです
- 4本以上は44〜45枠しかありません。この行の数字は参考程度に読んでください
- 重要度をそろえた比較も、完全ではありません。「優先度2を含む」で絞っただけで、枠の中身までは揃えていません
- 「本数そのものが効く」という説明は推測です。確かめていません
- 3年分です
- 変動スプレッド系の配信です
まとめ
- 本数が増えるほど大きく動く。1本4.9倍 → 2本10.8倍 → 3本20.6倍
- 重要度をそろえても、4.2倍の開きが残る
- 2通貨ペアでほぼ同じ数字
- 重要度のラベル(下2段階は区別つかず)より、本数のほうが当てになる
- **4本以上では下がる。**理由は分からない
カレンダーの読み方として、★の数より、その分に並んでいる行の数でした。
出典
- 集計データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティック(2023年8月25日〜2026年8月23日)と、同ソフトに付属する経済指標カレンダー(2026年8月26日取得)。集計スクリプトは自作
- 重要度ラベルの検証: 経済指標の「重要度」は当てになるか(当サイト)
- 3本の枠の代表例: 米雇用統計と米CPI、どちらが荒れるか(当サイト)
- 平均コストとの区別: 指標を避けてもコストは1円も減らなかった(当サイト)
- 実装するときの注意: 経済指標カレンダーを自動売買のフィルタに使うときの落とし穴(当サイト)
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引や指標の利用を推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。