資料室 ── データ品質 ── 更新 2026-09-16
ティックの時刻は1秒刻みだった — 8.6億件に、秒未満が1件も無い
ティックデータには時刻が入っています。その時刻はどれくらい細かいのでしょうか。
9銘柄・8億6,000万件を数えました。
結論
- **1秒未満の間隔が1件もありませんでした。**時刻は完全に1秒刻みです
- **同じ秒に複数のティックが入る割合は13%〜76%**と、銘柄で大きく違いました
- 多いときは1秒に20件以上入ります
- つまり1秒の中の順序は記録されているが、時刻は記録されていない
- ただし**実務で効く場面は限られます。**平常時は8秒に1回しか値がつかないので、1秒の粗さはその中に埋もれます
- 効くのは指標発表の瞬間だけでした
何を測ったか
- データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティック
- 期間: 2023年8月25日〜2026年8月23日
- 対象: 9銘柄(為替4・貴金属2・株価指数1・商品1・仮想通貨1)、合計8億6,050万件
- 測るもの: 連続する2ティックの時刻の差
時刻はソフトの内部形式(1899年12月30日からの経過日数を小数で持つ形)で入っています。これを秒に直したときの端数も直接見ました。
結果1:秒未満が1件も無い
間隔の分布です。米ドル/円の場合。
| 間隔 | 割合 |
|---|---|
| 0秒(前と同じ時刻) | 62.08% |
| 1秒 | 26.70% |
| 2秒 | 5.19% |
| 3秒 | 2.26% |
| 4秒以上 | 3.77% |
**0秒と、1秒の倍数しかありません。**0.1秒も0.5秒も、1件も出てきませんでした。
9銘柄すべて同じでした。合計8億6,050万件で、1秒未満の間隔はゼロ件です。
内部形式の端数も確かめました。秒に丸めたときの誤差は最大で0.00000024秒。これは計算に使う小数の丸め誤差そのもので、秒未満の情報は入っていないと言い切れます。
結果2:同じ秒に何件入るかは銘柄で違う
「前と同じ時刻」の割合が銘柄で大きく違いました。
| 銘柄 | ティック数 | 前と同じ時刻 | 値がついた秒あたり | 同一秒の最長 |
|---|---|---|---|---|
| 金 | 191,159,064 | 75.52% | 4.08件 | 20件 |
| 銀 | 108,155,411 | 67.22% | 3.05件 | 20件 |
| 英ポンド/円 | 112,323,388 | 64.54% | 2.82件 | 20件 |
| 米ドル/円 | 93,167,382 | 62.08% | 2.64件 | 20件 |
| 株価指数CFD | 86,306,523 | 60.10% | 2.51件 | 27件 |
| ビットコイン | 133,365,356 | 55.80% | 2.26件 | 18件 |
| ユーロ/米ドル | 60,869,289 | 55.49% | 2.25件 | 19件 |
| ユーロ/香港ドル | 67,586,261 | 42.90% | 1.75件 | 18件 |
| 天然ガス | 7,563,992 | 13.54% | 1.16件 | 10件 |
金は値がついた秒に平均4件入っています。天然ガスは1.16件で、ほとんど1秒に1件です。
**濃さが4倍近く違います。**同じソフトの同じフィードでも、銘柄によってデータの粒が違うということです。
最長が20前後に揃っているのは気になる
同一秒の最長連続が 18・19・20・20・20・20 と、6銘柄で18〜20に集まっています。株価指数CFDだけ27で、天然ガスは10でした。
偶然にしては揃いすぎているように見えます。配信側か格納側に何らかの上限があるのかもしれませんが、株価指数CFDが27に達しているので単純な上限ではありません。分かりませんでした。
結果3:順序は分かるが、時刻は分からない
ここが本題です。
同じ秒に3件のティックが入っているとき、どれが先に来たかはファイル上の並び順で分かります。ところが、その3件が
- 同じ秒の最初の10ミリ秒に固まっていたのか
- 1秒に均等に散らばっていたのか
は記録されていません。
これは1分足で検証したときに失われるものと同じ構造です。あちらは「1分足の中で損切りと利確のどちらが先か分からない」という話でした。ティックでも、1秒の粒度で同じことが起きています。
ただし違いもあります。1分足では順序そのものが分かりません。ティックでは順序は分かって、間隔だけが分かりません。失われている情報は、こちらのほうがずっと少ないわけです。
結果4:平常時は、この粗さが埋もれる
では実務でどれくらい効くのでしょうか。
流動性を4つの物差しで測った記事で、「値がつかない時間」を測っています。米ドル/円の場合、こうでした。
| 場面 | 値がつかない時間(99%点) |
|---|---|
| 平常時 | 8秒 |
| 毎朝のロールオーバー | 60秒 |
| 指標発表の瞬間 | 1秒 |
**平常時は8秒に1回しか値がつきません。**時刻が1秒刻みでも、そこに埋もれます。ロールオーバーに至っては60秒空きます。時刻の粗さより、値がつかない時間のほうがはるかに大きいわけです。
問題になるのは指標発表の瞬間だけです。指標発表とロールオーバーを比べた記事によれば、発表のその1分は1分あたり385ティックでした。1秒あたり6.4件です。
**この6.4件が、同じ時刻を持ちます。**発表の瞬間に何が起きたかを1秒より細かく追うことは、このデータではできません。
おまけ:時刻が巻き戻るティックが3件あった
株価指数CFDの8,630万件のうち、3件だけ前のティックより時刻が古いものがありました。他の8銘柄では0件です。
8,630万分の3なので集計への影響はありません。ただ、時刻が単調に増えることを前提にしたプログラムは、ここで止まるか、おかしな値を出します。集計スクリプトのバグに気づいた話に足す事例がまた1つ増えました。
実務でどう使うか
- 1秒より短い時間を条件にした検証は、このデータではできません。「発表から0.3秒後に入る」といったロジックは検証しようがありません
- **1秒足を作ると、中に最大20件以上入ります。**その中の値動きは足にすると消えます
- **平常時の戦略なら、1秒の粗さはほぼ影響しません。**そもそも8秒に1回しか値がつかないためです
- **指標発表を狙う戦略だけは注意が要ります。**いちばん細かく見たい瞬間が、いちばん時刻が潰れている場面です
- **時刻が単調に増えることを前提にしないでください。**3年で3件でも、止まるときは止まります
- 自分の使うデータで間隔の分布を数えてみてください。0秒と1秒の倍数しか出てこなければ、同じ形です
データの見方(方法と限界)
- 1つの配信元のデータです。他の配信元にはミリ秒が入っているかもしれません
- **秒未満が無いのが、配信元の仕様なのかソフトの格納形式なのかは区別できません。**外からは観測できません
- 9銘柄だけです。同じフィードの残りの銘柄は見ていません
- **「1秒の中の間隔が分からない」ことの実害は測っていません。**測るには、より細かいデータが要ります
- 同一秒の最長が20前後に揃う理由は分かりません
- ティックの数は配信側の間引きに依存します。「値がついた秒あたり4件」は市場の取引回数ではありません
- 3年分です
まとめ
- 8億6,050万件に、1秒未満の間隔が1件も無い。時刻は完全に1秒刻み
- 同じ秒に複数入る割合は13.54%(天然ガス)〜75.52%(金)
- 1秒の中の順序は分かるが、時刻は分からない
- 平常時は8秒に1回しか値がつかないので、この粗さは埋もれる
- 効くのは指標発表の瞬間(1秒に6.4件)だけ
- 時刻が巻き戻るティックが3件あった
1分足のときと同じで、失われているものは思ったより小さく、しかも効く場面が限られていました。
出典
- 集計データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティック(2023年8月25日〜2026年8月23日、9銘柄)。集計スクリプトは自作
- 1分足で失われるもの: 1分足で検証すると何が失われるのか(当サイト)
- 値がつかない時間: 同じくらい薄いのに、片方は8倍開き、片方はまったく開かなかった(当サイト)
- 指標発表時のティック密度: 指標発表とロールオーバーは正反対だった(当サイト)
- データの検査: ForexTesterのデータはどこまで信用できるか(当サイト)
- 時刻を前提にした失敗: 集計スクリプトのバグに気づいた話(当サイト)
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引やソフトウェアの利用を推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。