資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-10-05
通貨ペアの相関は、時間足ではなく時間帯と月で動いた — 7組を3年分のティックで測る
通貨ペアの性質と相関では、相関の数値を載せませんでした。「期間・時期で大きく変わるため」です。「10通貨ペアで検証した」は試行10回ではないでも、「相関は測り方で系統的に変わる」と書いて、値は出していません。
書いておいて、どれだけ変わるのかは測っていませんでした。
そこで手元の3年分のティックで、7組の通貨ペアの相関を4つの切り口で測り直しました。時間足、時間帯、荒れた日と静かな日、そして月ごとです。
結論
- **時間足ではほとんど変わりませんでした。**1分足から4時間足まで、どの組も差は0.07以内です
- 時間帯では大きく変わります。米ドル/円とユーロ/円の相関は、日本時間13時台が0.91、4時台が0.47でした。円を共有する組は東京時間に高く、欧州時間に下がります
- 月ごとにはさらに大きく変わります。同じ組が、ある月は0.08、別の月は0.94でした
- **「荒れると相関は1に近づく」は、組によります。**円を共有する組では強く成り立ちましたが、豪ドル/米ドルと豪ドル/円では逆に下がりました。7組のうち3組は、成り立たないか、ごく弱いものでした
- 相関を1つの数字で覚えるのは危険です。何で測ったかを添えない相関の値は、ほとんど意味を持ちません
何を測ったか
- データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティック
- 期間: 2023年8月25日〜2026年8月23日
- 組み合わせ: 共有している通貨の違いで7組を選びました
| 組 | 共有している通貨 |
|---|---|
| ユーロ/米ドル × ポンド/米ドル | 米ドル(同じ側) |
| ユーロ/米ドル × 米ドル/スイスフラン | 米ドル(逆の側) |
| ユーロ/円 × ポンド/円 | 円(同じ側) |
| 豪ドル/米ドル × 豪ドル/円 | 豪ドル(同じ側) |
| 米ドル/円 × ユーロ/円 | 円(同じ側) |
| ユーロ/米ドル × 米ドル/円 | 米ドル(逆の側) |
| ユーロ/米ドル × ユーロ/ポンド | ユーロ(同じ側) |
- 価格: 各分の最後のティックの中値。最後のティックが60秒より古い時点は使いません(週末や休場をまたぐ値動きを除くため)
- 測るもの: 2つのペアの値動き(対数リターン)の相関係数。1に近いほど同じ向き、−1に近いほど逆向きに動きます
結果①:時間足ではほとんど変わらない
| 組 | 1分 | 5分 | 15分 | 1時間 | 4時間 | 1日 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ユーロ/米ドル × ポンド/米ドル | 0.76 | 0.78 | 0.79 | 0.79 | 0.80 | 0.81 |
| ユーロ/米ドル × 米ドル/スイスフラン | −0.69 | −0.72 | −0.73 | −0.75 | −0.76 | −0.79 |
| ユーロ/円 × ポンド/円 | 0.85 | 0.86 | 0.86 | 0.87 | 0.88 | 0.87 |
| 豪ドル/米ドル × 豪ドル/円 | 0.59 | 0.59 | 0.59 | 0.58 | 0.58 | 0.51 |
| 米ドル/円 × ユーロ/円 | 0.70 | 0.70 | 0.69 | 0.70 | 0.72 | 0.71 |
| ユーロ/米ドル × 米ドル/円 | −0.46 | −0.48 | −0.49 | −0.50 | −0.49 | −0.57 |
| ユーロ/米ドル × ユーロ/ポンド | 0.30 | 0.30 | 0.30 | 0.28 | 0.27 | 0.30 |
1分足から4時間足まで、どの組も0.07以内に収まりました。日足だけ0.1ほど動く組がありますが、日足は3年で778本しかありません。
短い足では相関が低く出る、とよく言われます。2つのペアのティックが同じ瞬間に来ないからです。そこで1分足を「2つのペアの最後のティックが5秒以内にそろっている分」だけに絞っても測りましたが、上がったのは0.01前後でした。ティックが1秒刻みで入る主要ペアでは、この影響は小さいようです。
ロールオーバー(ニューヨーク17時)の1時間を除いても、0.01程度しか変わりませんでした。
時間足の選び方は、相関の値をほとんど左右しません。
結果②:時間帯では大きく変わる
15分足の相関を、始まりの時刻(日本時間)ごとに分けました。抜粋です。
| 日本時間 | 米ドル/円 × ユーロ/円 | ユーロ/円 × ポンド/円 | ユーロ/米ドル × ポンド/米ドル | ユーロ/米ドル × 米ドル/円 |
|---|---|---|---|---|
| 4時台 | 0.47 | 0.87 | 0.90 | −0.69 |
| 10時台 | 0.86 | 0.96 | 0.88 | −0.49 |
| 13時台 | 0.91 | 0.97 | 0.83 | −0.40 |
| 17時台 | 0.69 | 0.83 | 0.72 | −0.32 |
| 20時台 | 0.57 | 0.74 | 0.70 | −0.46 |
| 22時台 | 0.60 | 0.84 | 0.83 | −0.60 |
米ドル/円とユーロ/円は、13時台に0.91、4時台に0.47です。同じ2つのペアで、時間帯によって倍近く違います。
形には筋が通ります。
- **円を共有する組は、東京時間に高くなります。**東京時間は円が主役で、2つのペアがそろって円の動きを映すからだと考えられます
- **欧州時間には下がります。**ユーロやポンドそれぞれの動きが増え、共有していない側の動きが混ざるからです
- **ユーロ/米ドルとポンド/米ドルは、ニューヨーク時間の終盤(日本時間4時台)に最も高くなりました。**米ドルが主役の時間です
まとめると、共有している通貨が主役の時間に上がり、共有していない通貨が主役の時間に下がる、と読めます。ただし、どの通貨が主役かを測ったわけではありません。これは解釈です。
なお、日本時間6〜7時台は、どの組も相関が大きく落ちました(ユーロ/米ドル × ポンド/米ドルの1分足で0.25)。夏時間のロールオーバーにあたる時間で、ティックが平常の半分ほどに減る時間でもあります。理由は確かめていません。
結果③:「荒れると1に近づく」は組による
通貨ペアの性質と相関には、「相関は荒れた局面ほど1に近づく」と書きました。これを確かめます。
取引日ごとに5分足の相関を出し、その日の値動きの大きさで5つに分けました。いちばん静かな5分の1の日と、いちばん荒れた5分の1の日の比較です。
| 組 | 静かな日 | 荒れた日 | |
|---|---|---|---|
| ユーロ/円 × ポンド/円 | 0.72 | 0.92 | 1に近づく |
| 米ドル/円 × ユーロ/円 | 0.38 | 0.79 | 1に近づく |
| ユーロ/米ドル × ポンド/米ドル | 0.72 | 0.82 | 1に近づく |
| ユーロ/米ドル × ユーロ/ポンド | 0.16 | 0.40 | 1に近づく |
| ユーロ/米ドル × 米ドル/スイスフラン | −0.65 | −0.73 | わずかに−1へ |
| ユーロ/米ドル × 米ドル/円 | −0.47 | −0.47 | 変わらない |
| 豪ドル/米ドル × 豪ドル/円 | 0.64 | 0.59 | 下がる |
**円を共有する2組は、はっきり1に近づきました。**一方、豪ドル/米ドルと豪ドル/円は下がり、ユーロ/米ドルと米ドル/円は変わりませんでした。
違いがよく見えるのが、2024年4月29日です。3年間で円が最も大きく動いた日の1つでした。
| 組 | 2024年4月29日の相関(5分足) |
|---|---|
| ユーロ/円 × ポンド/円 | 0.995 |
| 米ドル/円 × ユーロ/円 | 0.989 |
| ユーロ/米ドル × 米ドル/円 | −0.27 |
| 豪ドル/米ドル × 豪ドル/円 | −0.17 |
円が主役になると、円を共有する組はほぼ1になります。ところが**豪ドル/米ドルと豪ドル/円は、ふだんの0.6から逆向きにまで振れました。**この2つが共有しているのは豪ドルで、円は片方にしか入っていないからです。
月単位でも同じことが起きていました。2024年7月は、米ドル/円 × ユーロ/円の相関が3年で最も高い月(0.94)で、同じ月に豪ドル/米ドル × 豪ドル/円が最も低い月(0.26)でした。
つまり「荒れる」は1種類ではありません。共有している通貨が荒れれば相関は1に近づき、共有していない通貨が荒れれば相関は崩れます。「荒れると1に近づく」は、前者だけを見た言い方でした。
結果④:月ごとにはさらに大きく変わる
15分足の相関を月ごとに出しました(端の欠けた月を除く35か月)。
| 組 | 3年通し | 月の最低 | 月の中央値 | 月の最高 |
|---|---|---|---|---|
| ユーロ/米ドル × ポンド/米ドル | 0.79 | 0.68 | 0.81 | 0.88 |
| ユーロ/米ドル × 米ドル/スイスフラン | −0.73 | −0.53 | −0.76 | −0.88 |
| ユーロ/円 × ポンド/円 | 0.86 | 0.67 | 0.84 | 0.96 |
| 豪ドル/米ドル × 豪ドル/円 | 0.59 | 0.26 | 0.59 | 0.89 |
| 米ドル/円 × ユーロ/円 | 0.69 | 0.08 | 0.70 | 0.94 |
| ユーロ/米ドル × 米ドル/円 | −0.49 | −0.20 | −0.53 | −0.75 |
| ユーロ/米ドル × ユーロ/ポンド | 0.30 | −0.03 | 0.16 | 0.70 |
米ドル/円とユーロ/円は、2026年6月に0.08(ほぼ無関係)、2024年7月に0.94(ほぼ同じ動き)でした。3年通しの0.69は、どちらの月の姿も表していません。
もう1つ、ユーロ/米ドル × ユーロ/ポンドの行に注意してください。3年通しの0.30は、月の中央値0.16の2倍近くあります。荒れた月ほど値動きが大きいので、3年まとめると荒れた月の相関に引っ張られるからです。3年分をまとめた1つの数字は、典型的な月の値ではありません。サンプルを増やしたら、かえって間違えた話と同じ型です。
実務でどう使うか
- **相関の値を見たら、何で測ったかを確かめてください。**期間・時間帯・時間足のうち、効くのは期間と時間帯です。時間足はほとんど効きません
- **1つの値より、月ごとの幅を見てください。**平均的な相関が同じでも、0.08まで落ちる組と0.68までしか落ちない組では、使い方が違ってきます
- 複数ペアを持つときは、共有している通貨で束ねて考えてください(通貨ペアの性質と相関と同じ結論です)。そのうえで、共有していない通貨が荒れたときに関係が崩れることも想定に入れておくとよいでしょう
- **時間帯を絞って運用する場合は、その時間帯の相関を測ってください。**東京時間だけで動かすなら、円を共有する組は3年通しの値より強く連動しています
- 複数ペアでの検証を「独立した試行」と数える前に、戦略の損益の相関を測ることに変わりはありません。ここで測ったのは価格の相関で、損益の相関ではありません
データの見方(方法と限界)
- 1つの配信元のデータです。中値で測っており、約定した値ではありません
- 7組だけです。組の選び方によって、「荒れると1に近づく」が成り立つ組の割合は変わります
- 時間帯は日本時間で固定しています。夏時間と冬時間で欧米の時間帯が1時間ずれるので、境目の時間帯はぼやけています
- **「荒れた日」は組ごとに決めています。**その2ペアの値動きの大きさで並べたので、組が違えば「荒れた日」も違います
- 「共有している通貨が主役のときに上がる」という説明は解釈です。どの通貨が主役かを測ってはいません
- 日本時間6〜7時台に相関が落ちる理由は分かっていません
- 日足は3年で778本しかありません
- 3年分です。この期間に起きなかった種類の相場(長い低ボラティリティ期など)については何も言えません
まとめ
- 時間足では変わらない(1分〜4時間で0.07以内)
- 時間帯で変わる(米ドル/円 × ユーロ/円が13時台0.91、4時台0.47)
- 月で大きく変わる(同じ組が0.08〜0.94)
- **「荒れると1に近づく」は組による。**共有している通貨が荒れると1に近づき、共有していない通貨が荒れると崩れる
- 3年通しの1つの値は、典型的な月の値ではない
相関は通貨ペアの性質ではなく、その期間・その時間帯に、どの通貨が動いていたかの記録でした。
出典
- 集計データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティック(2023年8月25日〜2026年8月23日)。集計スクリプトは自作
- 相関の構造: 通貨ペアの性質と相関(当サイト)
- 価格の相関と損益の相関: 「10通貨ペアで検証した」は、試行10回ではない(当サイト)
- ほぼ1の例: ユーロ/香港ドルはユーロ/米ドルと同じ動きで5.8倍のコスト(当サイト。1分足の相関0.985)
- まとめると像がぼやける件: サンプルを増やしたら、かえって間違えた(当サイト)
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引や通貨ペアの組み合わせを推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。