資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-09-10
改定値は見る意味があるのか — PMIは3分の1に落ち、ミシガン大は落ちなかった
同じ統計が、何度も発表されることがあります。
- PMIは「速報(Flash)」の約1週間後に「確定(Final)」が出ます
- ミシガン大消費者信頼感は「速報」の約2週間後に「改定」が出ます
- 米GDPは「速報 → 改定 → 確定」と3回
「改定値は無視してよい」と言われることがあります。数字がほとんど変わらないからです。
**相場の反応でも、そう言えるのでしょうか。**測りました。
結論
- PMIの確定値は、速報の3分の1まで落ちます(5.25倍 → 1.71倍)
- ミシガン大の改定値は、ほとんど落ちません(3.46倍 → 3.04倍)
- つまり**「改定値は無視してよい」は指標による**、というのが答えでした
- 2通貨ペアで同じ形でした
- **米GDPは測れませんでした。**速報も改定も確定も、毎週の失業保険申請と同じ枠で出るためです
何を測ったか
- データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティックと、同ソフトに付属する経済指標カレンダー
- 期間: 2023年8月25日〜2026年8月23日
- 対象: 米ドル/円、ユーロ/米ドル
- 測るもの: 発表のその1分の値幅とスプレッド
- 対照: 同じ日本時間の時間帯で、その系列の前後30分に入らない分
分析の単位は「発表枠」です
製造業PMIとサービス業PMIの速報は同じ分に出ます。分けられないので、まとめて「PMI速報」として扱っています(重要度の記事と同じ扱いです)。
米GDPは測れませんでした
やろうとして、できませんでした。
米GDPは速報・改定・確定のいずれも木曜8:30 ETに発表されます。そして経済指標の地図で見たとおり、その枠には毎週の新規失業保険申請が必ず入っています。
つまり「GDP確定値の反応」を測ろうとすると、毎週の失業保険申請の反応を測ってしまいます。分離できません。
最初の集計では、GDPの確定値が対照の6.3倍という数字が出ました。確定値でそれはおかしいと気づいて調べたら、これが原因でした。
結果:PMIは落ちる、ミシガン大は落ちない
米ドル/円(対照:スプレッド0.6銭、1分値幅2.8銭)
| 系列 | 段階 | 回数 | 1分値幅 | 倍率 | スプレッド | 倍率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ミシガン大消費者信頼感 | 速報 | 36 | 9.7銭 | 3.46倍 | 0.9銭 | 1.50倍 |
| 改定 | 36 | 8.5銭 | 3.04倍 | 0.8銭 | 1.33倍 | |
| 米PMI | 速報 | 36 | 14.7銭 | 5.25倍 | 1.0銭 | 1.67倍 |
| 確定 | 71 | 4.8銭 | 1.71倍 | 0.8銭 | 1.33倍 |
ユーロ/米ドル(対照:0.3pips、1.9pips)
| 系列 | 段階 | 1分値幅 | 倍率 | スプレッド | 倍率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ミシガン大 | 速報 | 5.5pips | 2.89倍 | 0.4pips | 1.33倍 |
| 改定 | 4.1pips | 2.16倍 | 0.4pips | 1.33倍 | |
| 米PMI | 速報 | 9.2pips | 4.84倍 | 0.4pips | 1.33倍 |
| 確定 | 3.3pips | 1.74倍 | 0.3pips | 1.00倍 |
**PMIは3分の1に落ちます。**5.25倍 → 1.71倍、4.84倍 → 1.74倍。両ペアでほぼ同じ比率です。
**ミシガン大は1〜3割減にとどまります。**3.46倍 → 3.04倍、2.89倍 → 2.16倍。
なぜ違うのか
推測になりますが、こう考えると筋が通ります。
PMIの速報は、回答の大部分を集め終えた時点の集計です。確定値までに増える情報が少ないので、確定値には新しい材料がほとんどありません。
実際、予想の精度を測った記事で、確報PMIだけは予想が「前回の値をそのまま使う」に勝てないことが分かっていました(誤差の比1.00〜1.06)。この場合の「前回」は速報値です。速報値がすでに正解に近い、ということです。
予想の精度と相場の反応が、同じ結論を指しています。
一方ミシガン大の改定値には、別の中身があります。標本が増えるだけでなく、インフレ期待の確報値が同時に出ます。これは単独でも注目される数字です。
つまり「改定値」という言葉が同じでも、中身に新しいものがあるかどうかが違うわけです。
実務でどう使うか
- PMIの確定値は、避ける対象としては小さいでしょう。1.7倍です。速報のほうを見てください
- ミシガン大の改定値は、速報とほぼ同じ扱いが必要です。3.0倍あります
- **「改定値だから」で一律に判断しないでください。**指標によって違いました
- 確定値の予想を見る意味も薄そうです。予想が「前回そのまま」に勝てないためです
- コストという意味では、いずれも毎朝のロールオーバー(8倍)より小さい話です
データの見方(方法と限界)
- 1つの配信元のデータです。ティックもカレンダーも同じソフトに付属するものです
- 測れたのは2系列だけです。速報と改定の両方がそろい、他の指標と分離できる系列が、これしかありませんでした
- 米GDPは分離できません(上記)。3段階そろっている貴重な系列でしたが、断念しました
- PMIの「確定」は71枠あります。製造業とサービス業の確定値は別の日に出るためです。速報は同じ分なので36枠です。枠の数が違うことに注意してください
- **重要度で絞っていません。**確定値には重要度が低いものも含まれます
- 3年分です。ミシガン大は月2回なので36+36、PMIも同様です
- 「なぜ違うのか」は推測です。回答の集まり方やインフレ期待の扱いについて、確かめたわけではありません
- 変動スプレッド系の配信です
まとめ
- PMIの確定値は速報の3分の1(5.25倍 → 1.71倍)
- ミシガン大の改定値はほとんど落ちない(3.46倍 → 3.04倍)
- 「改定値は無視してよい」は指標による
- PMIについては、予想の精度と相場の反応が同じ結論を指した
- 米GDPは毎週の失業保険申請と同じ枠なので測れなかった
「改定値」というひとつの言葉に、まったく違う2つのものが入っていました。
出典
- 集計データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティック(2023年8月25日〜2026年8月23日)と、同ソフトに付属する経済指標カレンダー(2026年8月26日取得)。集計スクリプトは自作
- 予想の精度: プロの予想はどれくらい当たるのか(当サイト)
- 発表枠という単位: 経済指標の「重要度」は当てになるか(当サイト)
- 発表の集中: 経済指標はいつ出るのか(当サイト)
- コストの大きさの比較: 同じくらい薄いのに、片方は8倍開き、片方はまったく開かなかった(当サイト)
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引や指標の利用を推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。