資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-09-04
1日の85%は「無風」だった — 指標を避けてもコストはほぼ変わらず、効いていたのは時間帯だけ
このサイトでは、避けるべき時間の話ばかり書いてきました。
- ロールオーバーの1時間はスプレッドが9〜26倍になる
- 米CPIや雇用統計の発表枠は2〜3倍になる
- 祝日は値がつきにくくなる
読む側からすれば、当然こう思うはずです。
「では、いつなら安いのか。」
数えました。そして、避けることの効果そのものも測りました。結果は少し拍子抜けするものでした。
結論
- **1日の83〜89%は「無風」**でした。指標の前後5分でも、ロールオーバーの前後30分でも、祝日でもない時間です
- **その無風の時間だけに絞ってスプレッドを測っても、時間帯別の中央値はほとんど変わりませんでした。**24時間中22時間で差は0.0でした
- つまり指標を避けても、コストはほとんど変わりません。指標は短すぎて、その時間帯の平均をほとんど動かしていません
- 唯一の例外がロールオーバーの時間帯です。そしてここは、前後30分を除いても平常の6倍が残りました。影響は30分では終わっていません
- 安いのはロンドンとニューヨークの時間帯、高いのはロールオーバー。結局それだけでした
何を測ったか
- データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティックと、同ソフトに付属する経済指標カレンダー
- 期間: 2023年8月25日〜2026年8月23日
- 対象: 米ドル/円、ユーロ/米ドル
- 「無風」の定義: 次のすべてに当てはまらない時間
- ロールオーバー(ニューヨーク17時)の前後30分
- そのペアに関係する指標の前後5分(重要度は問わない)
- ペアのどちらかの国の祝日
- 週末
- **夏時間と冬時間で分けて集計しました。**混ぜると像が壊れます(サンプルを増やしたら、かえって間違えた)
指標の前後5分だけで、米ドル/円では253,623分が埋まります。3年で約176日分です。
結果1:1日の83〜89%は無風
| 米国夏時間 | 米国冬時間 | |
|---|---|---|
| 米ドル/円 | 89.2% | 84.6% |
| ユーロ/米ドル | 82.8% | — |
大半の時間には、何も起きていません。
「指標だらけで落ち着いて取引できない」という感覚があるとすれば、それは印象と実際がずれています。
時間帯別に見ると、無風の割合が低い時間ははっきりしています(米ドル/円・夏時間)。
| 日本時間 | 無風の割合 |
|---|---|
| 5時台 | 39.8% |
| 6時台(ロールオーバー) | 61.3% |
| 8時台 | 79.8% |
| 21時台 | 79.0% |
| その他の時間帯 | 90%以上 |
5時台と6時台が低いのはロールオーバーの前後30分を除いているからです。21時台と8時台が低いのは指標が集中しているからです。
結果2:無風だけに絞っても、中央値は変わらない
ここが今回の本題です。
米ドル/円(夏時間、単位は銭)。「全体」は無風でない時間も含めた中央値です。
| 日本時間 | 無風の中央値 | 全体の中央値 | 差 |
|---|---|---|---|
| 0時 | 0.5 | 0.5 | 0.0 |
| 1〜4時 | 0.5 | 0.5 | 0.0 |
| 5時 | 0.6 | 0.8 | 0.2 |
| 6時 | 3.6 | 4.1 | 0.5 |
| 7時 | 1.0 | 1.0 | 0.0 |
| 8時 | 0.7 | 0.7 | 0.0 |
| 9〜14時 | 0.6 | 0.6 | 0.0 |
| 15〜20時 | 0.5 | 0.5〜0.6 | 0.0〜0.1 |
| 21〜23時 | 0.5 | 0.5〜0.6 | 0.0〜0.1 |
24時間のうち22時間で、差は0.0でした。
ユーロ/米ドルでも同じでした。差が0.1pips出たのは5時・6時・10時の3つだけで、あとはすべて0.0です。
なぜ変わらないのか
理由は単純です。指標は短く、回数が少ないからです。
米雇用統計を分単位で測ったときに分かったとおり、拡大は発表のその1分がピークで、10分で元に戻ります。1時間の中の数分が2倍になっても、その時間帯の中央値はほとんど動きません。
言い換えると、「指標を避ける」は、その瞬間にポジションを持っていた人には効きますが、コスト全体で見ると効きません。
結果3:ロールオーバーだけは違う。しかも30分では足りない
唯一、無風でフィルタすると差が出るのがロールオーバーの時間帯です。
米ドル/円・夏時間の6時台で、全体4.1銭に対し無風3.6銭。0.5銭下がりました。
ただし注目すべきは、下がってもまだ3.6銭あることです。平常時が0.5銭なので、まだ7倍です。
理由は、ロールオーバーの影響が前後30分では終わっていないからです。分単位で測ったときにも、平常の1.2倍を超える範囲は36〜61分続いていました。6時台のうち6時00分〜6時30分を除いても、残りの30分がまだ広いわけです。
冬時間の7時台でも同じ形でした(全体3.6銭 → 無風3.2銭)。
結果4:では、いつが安いのか
無風時の中央値がいちばん小さい時間帯です。
米ドル/円・米国夏時間
| 日本時間 | 無風の中央値 | 90%点 |
|---|---|---|
| 0〜4時 | 0.5銭 | 0.8〜0.9 |
| 15〜23時 | 0.5銭 | 0.8〜0.9 |
| 9〜14時 | 0.6銭 | 0.9〜1.0 |
| 7時 | 1.0銭 | 2.0 |
| 6時 | 3.6銭 | 7.9 |
日本時間の0〜4時はニューヨークの午前、15〜23時はロンドンの午前から午後にあたります。市場が最も厚い時間です。
逆に6時台だけが突出しています。90%点では7.9銭で、安い時間帯の10倍近くです。
冬時間では全体が1時間ずれ、7時台が最も高くなります。
実務でどう使うか
- **指標カレンダーを見て避ける労力は、コスト面では報われにくいようです。**24時間中22時間で差は0.0でした
- ただし「その瞬間にポジションを持つ・建てる」なら話は別です。発表の前後10分は実際に開きます。避けるかどうかは、平均コストではなく最悪値の問題として考えるほうが筋が通ります
- **時間帯を1時間ずらすほうが、はるかに大きく効きます。**6時台と0時台では7倍違いました
- **ロールオーバーを避けるなら、前後30分では足りません。**1時間見ておくほうが安全です
- 自分の取引時刻の実測値は時間帯別コスト計算機で確認できます(※こちらは1時間単位なので、瞬間のピークはこれより大きくなります)
データの見方(方法と限界)
- 1つの配信元のデータです。ForexTester 6 の Advanced Data Feed で、その先の流動性提供元は公開されていません
- **「無風」の定義は私が決めたものです。**前後5分・前後30分という幅に根拠はありません。幅を変えれば無風の割合は変わります
- 2通貨ペアだけです。指標の少ない通貨のペアなら、無風の割合はもっと高くなるはずです
- **中央値の話です。**90%点や最悪値は別の姿をしています。この記事の「差が0.0」は、平均的なコストが変わらないという意味であって、最悪値が変わらないという意味ではありません
- **祝日はカレンダーの祝日行で判定しました。**提供元と登録基準は公開されていません
- 変動スプレッド系の配信です。国内店頭FXで主流の「原則固定」では、拡大のかわりに約定拒否という形になることがあります(約定とスリッページの仕組み)
まとめ
- 1日の83〜89%は無風(指標・ロールオーバー・祝日のいずれでもない)
- 無風だけに絞っても、時間帯別の中央値は24時間中22時間で変わらなかった
- 指標は短く回数が少ないので、時間帯の平均をほとんど動かさない
- 例外はロールオーバーの時間帯だけ。しかも前後30分を除いてもまだ7倍残る
- 安いのはロンドンとニューヨークの時間帯、高いのはロールオーバー
避けるべきものを増やすより、取引する時間を決めるほうが効きました。
出典
- 集計データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティック(2023年8月25日〜2026年8月23日)と、同ソフトに付属する経済指標カレンダー。集計スクリプトは自作
- 時間帯別のスプレッド: スプレッドが開くのは1日1時間(当サイト)
- 指標の実測: 経済指標の「重要度」は当てになるか / 米雇用統計でスプレッドはどれだけ開くか(当サイト)
- ロールオーバーの持続時間: 「NZドルは1日2回ロールする」は本当か(当サイト)
- 祝日: 祝日のスプレッドは開かなかった(当サイト)
- 夏時間の扱い: サンプルを増やしたら、かえって間違えた(当サイト)
- 約定面のコスト: 約定とスリッページの仕組み(当サイト)
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引や時間帯を推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。