資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-09-09

中央銀行8行の政策発表を同じ物差しで測る — 最も動かすのはNZ、ただしECBだけ反応がその瞬間に来ない

「中央銀行の政策発表は相場を動かす」——これは間違いなくそうです。

では、どの中央銀行がいちばん動かすのでしょうか。そして、どれくらい動くのでしょうか。

横並びで比べた資料が見当たらなかったので、測りました。主要8行、3年分です。

結論

  • 1分の値幅は、平常の9.1倍から26.1倍まで開きがありました。最大はニュージーランド準備銀行(RBNZ)
  • スプレッドは1.60倍から2.67倍の範囲に収まります。また値幅ほどは動きません
  • **発表時刻どおりに反応が来るかは、行によってまったく違いました。**FRBは88%が発表の分ちょうど。**ECBは35%**しかありません
  • ECBが最下位に見えるのは、反応が発表の分に来ないからです。23回中12回は+6分より後にピークが来ています
  • **日銀だけ、影響が31分続きます。**他行は2〜10分です

何を測ったか

  • データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティックと、同ソフトに付属する経済指標カレンダー
  • 期間: 2023年8月25日〜2026年8月23日
  • 測り方: 各行の政策金利の発表枠を、その通貨の対ドルペアで測ります(日銀とFRBは米ドル/円)
  • 比べ方: ペアが違うので絶対値は比べられません。そのペアの平常時に対する倍率で並べます

前提として、カレンダーの記載時刻が正しいことを先に確かめてあります。政策金利は「数字が出るタイプ」なので、原則として発表の分ちょうどに反応が出るはずです。

結果1:値幅は9倍から26倍まで

発表のその1分の値幅(中値の最大−最小)です。

中央銀行ペア回数値幅スプレッド
RBNZ(NZ)NZドル/米ドル2026.1倍2.00倍
FRB(米)ユーロ/米ドル2421.6倍2.00倍
SNB(スイス)米ドル/スイスフラン1221.6倍2.22倍
BOE(英)英ポンド/米ドル2321.5倍1.75倍
FRB(米)米ドル/円2420.5倍2.67倍
BOC(加)米ドル/カナダドル2316.2倍1.75倍
RBA(豪)豪ドル/米ドル2514.8倍1.60倍
日銀米ドル/円2414.3倍2.50倍
ECB(欧)ユーロ/米ドル239.1倍2.00倍

値幅は最大と最小で2.9倍の開きがあります。

スプレッドは1.60〜2.67倍。こちらは行が違ってもあまり変わりません。

これはサプライズの大きさで測ったときと同じ形です。**価格は大きく動くのに、スプレッドはそれほど開かない。**このサイトで測ってきた中で、4回目の同じパターンです。

結果2:時刻どおりに反応が来るかは、行によって違う

ここが今回いちばん意外だった部分です。

**1回ごとに、値幅が最大になった分を調べました。**発表時刻が正確なら、これは0分に集まるはずです。

0分ちょうど±1〜2分±3〜5分±6〜15分±16分以上
FRB(24回)21回(88%)3回–––
日銀(24回)15回(63%)8回–1回–
ECB(23回)8回(35%)1回2回9回3回

**FRBは、ほぼ時計どおりです。**24回中21回が発表の分ちょうどでした。米国東部時間14時00分に発表する、という運用が徹底されています。

**ECBはまったく違いました。**発表の分にピークが来たのは3回に1回。半分以上は6分以上あとにピークが来ています。

ECBの数字が小さいのは、そういう理由

上の表でECBだけ値幅が9.1倍と低いのは、弱いイベントだからではありません。

反応が発表の分に来ないので、その分だけを見ると小さく見えるのです。実際、前後15分まで広げると、ピークは**+15分で10.3倍**でした。

理由は推測になりますが、ECBは政策金利の発表そのものより、その後の説明のほうが情報量が多いという運用だと考えると筋が通ります。金利自体は事前に織り込まれていることが多く、予想の一致率も95%ありました。

「その瞬間を避ける」という対策は、ECBには効きません。

結果3:日銀だけ、影響が長い

スプレッドが平常の1.2倍を超えていた時間の長さです。

中央銀行1.2倍を超えていた分数
日銀31分
SNB(スイス)10分
FRB(ユーロ/米ドル)7分
RBNZ / ECB6分
FRB(米ドル/円)5分
BOE4分
BOC / RBA2分

**日銀だけ桁が違います。**他行が2〜10分で収まるのに対し、31分続いていました。

日銀は63%が発表の分ちょうどにピークが来ているので、時刻がばらついているせいではありません。発表後も影響が続いている、と読むのが素直です。

なお、この3年は日銀の政策変更が相次いだ時期です。期間に固有の可能性があります。

実務でどう使うか

  • **避けるなら、行ごとに幅を変える必要があります。**FRB・BOE・BOC・RBAは前後5分で足ります。日銀は30分以上見ておくほうが安全です
  • **ECBは「発表の瞬間」を避けても効きません。**反応は+6〜15分に来ます
  • **値幅で見てください。**スプレッドは1.6〜2.7倍にしかならず、行ごとの差もほとんど出ませんでした
  • **RBNZは回数が少ないのに最も動きます。**NZドルを扱うなら、年8回の発表は把握しておく価値があります
  • これらはいずれも毎朝のロールオーバーとは別の話です。コストとしてはロールオーバーのほうが大きいままです

データの見方(方法と限界)

  • 1つの配信元のデータです。ティックもカレンダーも同じソフトに付属するものです
  • 各行12〜25回しかありません。SNBは四半期ごとなので12回です。個々の発表のばらつきは大きく、中央値で見た姿です
  • **ペアが違うので、絶対値は比べられません。**平常時に対する倍率で並べています。ペアごとに平常時の水準が違うことには注意してください
  • **3年間に固有の可能性があります。**特に日銀は、この期間に政策変更が集中していました
  • 政策金利の発表枠だけを見ています。声明・議事要旨・記者会見は別枠で、会見は+4〜6分ずれることが分かっています
  • ECBの「+15分」も、前後15分の窓の端です。もっと広げればさらに後にピークがある可能性があります
  • 変動スプレッド系の配信です。国内店頭FXで主流の「原則固定」とは性質が違います

まとめ

  • **値幅は9.1倍(ECB)から26.1倍(RBNZ)**まで。2.9倍の開き
  • スプレッドは1.60〜2.67倍。行が違ってもあまり変わらない(同じ形が4回目)
  • **時刻の正確さが行で違う。**FRB 88%、日銀 63%、ECB 35%
  • ECBが低く見えるのは、反応が発表の分に来ないから。+15分で10.3倍
  • 日銀だけ影響が31分続く(他行は2〜10分)

「中央銀行の発表を避ける」と言うとき、どの行かによって、避ける幅も避ける意味も違いました。

出典

※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引や時間帯を推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。