資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-09-10
中国の指標はどの通貨に効くのか — 豪ドルが最も動き、ユーロにも届いていた
「中国の指標は豪ドルに効く」
よく聞く話です。中国は豪州の最大の輸出先なので、理屈は通ります。
手元のカレンダーには中国の指標が入っています。ところが、測った資料が見当たりませんでした。
確かめました。
結論
- 通説は正しいでした。豪ドル/米ドルの値幅が平常の2.10倍で最大です
- **ただし、豪ドルだけではありません。**円で1.65倍、ユーロでも1.45倍動いています
- 距離に応じた勾配がありました。豪ドル > 円 > ユーロの順です
- ユーロ/米ドルは、値幅が1.45倍なのにスプレッドは1.00倍でした。まったく反応していません
- 「価格は動くのにスプレッドは開かない」は、これで5回目です
何を測ったか
- データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティックと、同ソフトに付属する経済指標カレンダー
- 期間: 2023年8月25日〜2026年8月23日
- 対象の指標: 中国(CNY)の重要度1以上。CPI、PPI、製造業PMI、非製造業PMI、ローンプライムレート、新規融資、鉱工業生産、小売売上高、GDPなど
- 比べるペア: 豪ドル/米ドル・豪ドル/円(検証対象)/ 米ドル/円・ユーロ/米ドル(対照)
対照の作り方が肝でした
中国の指標は、日本時間10時台に集中しています(145枠のうち大半)。
この時間帯はもともと薄いので、平常時全体と比べたら差が出て当たり前です。それでは何も測ったことになりません。
そこで対照を「同じ日本時間の時間帯で、発表が無い分」にしました。
さらに、他の通貨の指標が前後5分に出ている分は除いています。日本や豪州の指標が同じ時刻に出ていると、どちらの効果か分からなくなるためです。151枠のうち145枠が残りました。
**重要度2だけでは足りませんでした。**3年間で中国の重要度2はわずか40件です。重要度1まで広げて145枠にしています。
結果:豪ドル > 円 > ユーロ
発表のその1分です。
| ペア | 1分値幅 | 対照 | 倍率 | スプレッド | 対照 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 豪ドル/米ドル | 2.1pips | 1.0pips | 2.10倍 | 1.2pips | 1.0pips | 1.20倍 |
| 豪ドル/円 | 3.4銭 | 1.8銭 | 1.89倍 | 1.2銭 | 0.8銭 | 1.50倍 |
| 米ドル/円 | 3.3銭 | 2.0銭 | 1.65倍 | 0.7銭 | 0.6銭 | 1.17倍 |
| ユーロ/米ドル | 1.6pips | 1.1pips | 1.45倍 | 0.3pips | 0.3pips | 1.00倍 |
豪ドルが最大でした。通説どおりです。
そして順番がきれいに並びました。豪ドル(2.10)、豪ドル/円(1.89)、米ドル/円(1.65)、ユーロ/米ドル(1.45)。
効いているのは豪ドルだけではない
意外だったのはここです。
ユーロ/米ドルでも値幅が1.45倍になっています。対照は「同じ時間帯で発表が無い分」なので、これは中国の指標に反応していると読むのが素直です。
つまり中国の指標は、豪ドルに強く効き、他の通貨にも届いているという姿でした。
順番を「中国との関係の近さ」と読むと筋は通ります。
- 豪ドル:最大の輸出先が中国
- 円:アジア時間に取引が厚く、中国との貿易も大きい
- ユーロ:関係はあるが、上の2つよりは遠い
ただし**これは解釈であって、測ったものではありません。**別の説明(たとえばアジア時間の取引の厚さの違い)も否定できません。
またしても:価格は動くのにスプレッドは開かない
表のスプレッドの列を見てください。
ユーロ/米ドルは1.00倍です。値幅が1.45倍になっているのに、スプレッドはまったく動いていません。
米ドル/円も1.17倍で、値幅の1.65倍に比べれば小さい。豪ドル/円だけが1.50倍と、比較的動いています。
これはこのサイトで繰り返し出てくる形です。
| 場面 | 価格 | スプレッド |
|---|---|---|
| 祝日 | — | 変わらない(値がつく回数は1/4) |
| 記者会見 | 動く | ほぼ変わらない |
| 指標のサプライズ | 3倍 | ほぼ変わらない |
| 中央銀行8行 | 9〜26倍 | 1.6〜2.7倍どまり |
| 中国の指標(ユーロ) | 1.45倍 | 1.00倍 |
5回目です。
前に整理したとおり、スプレッドは「値を出す人がいるか」を測る道具です。中国の指標でユーロの値が薄くなる理由はないので、スプレッドが動かないのは当然、と読むほうが自然でしょう。
実務でどう使うか
- **豪ドルを扱うなら、中国の指標は見る価値があります。**日本時間10時台に集中しています
- **円も無関係ではありません。**1.65倍です。ただし毎朝のロールオーバー(8倍)とは桁が違います
- **スプレッドで判断しないでください。**ユーロは1.00倍で、スプレッドだけ見れば「何も起きていない」ように見えます
- 中国の指標は重要度が低く設定されがちです。重要度のラベルは実測とあまり対応していませんので、通貨ペアに合わせて自分で判断する必要があります
- 通貨ペアごとの性質は別記事にまとめています
データの見方(方法と限界)
- 1つの配信元のデータです。ティックもカレンダーも同じソフトに付属するものです
- 145枠だけです。3年分で、しかも重要度1まで広げてこの数です。個々の指標の違いは見ていません
- 重要度2に限ると40件しかなく、測れませんでした。重要度1を含めた結果です
- 中国の指標は発表時刻が動くことがあります。カレンダーの時刻の精度は米国・欧州の指標で確かめたもので、中国については確かめていません
- 日本時間10時台に集中しています。この時間帯に固有の何かが混ざっている可能性は否定できません
- 「距離に応じた勾配」は解釈です。アジア時間の取引の厚さの違いなど、別の説明も否定できません
- 中国の指標そのものの信頼性については何も言えません。ここで測ったのは相場の反応だけです
- 変動スプレッド系の配信です。国内店頭FXで主流の「原則固定」とは性質が違います
まとめ
- **「中国の指標は豪ドルに効く」は正しい。**豪ドル/米ドルの値幅が2.10倍で最大
- **ただし豪ドルだけではない。**円1.65倍、ユーロ1.45倍
- 豪ドル > 円 > ユーロという順番になった
- ユーロはスプレッドが1.00倍。価格は動くのにまったく反応しない
- 「価格は動くのにスプレッドは開かない」は5回目
通説は当たっていましたが、当たり方が思ったより広かったというのが結果でした。
出典
- 集計データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティック(2023年8月25日〜2026年8月23日)と、同ソフトに付属する経済指標カレンダー(2026年8月26日取得)。中国の重要度1以上の145枠。集計スクリプトは自作
- 物差しの選び方: 同じくらい薄いのに、片方は8倍開き、片方はまったく開かなかった(当サイト)
- 同じ形の乖離: 祝日のスプレッドは開かなかった / 予想を外してもスプレッドは開かなかった / 中央銀行8行の政策発表を同じ物差しで測る(当サイト)
- 重要度ラベルと時刻: 経済指標の「重要度」は当てになるか / 経済指標カレンダーの時刻はどれだけ正確か(当サイト)
- 通貨ペアの性質: 通貨ペアの性質と相関(当サイト)
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引や通貨ペアを推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。