資料室 ── 市場構造・コスト ── 更新 2026-09-14
「CPIは重要」は米国だけの話だった — 9か国のCPIを同じ物差しで測る
「CPI(消費者物価指数)は重要な指標です」
どの解説にもそう書いてあります。では、どの国のCPIも同じように重要なのでしょうか。
9か国分を、同じ物差しで測りました。
結論
- 米国が突出していました。平常の31.1倍です
- カナダ(16.8倍)・英国(16.3倍)・NZ(14.8倍)・豪州(14.4倍)が続きます
- ユーロ圏は3.5倍、日本は2.4倍しかありません。米国の10分の1以下です
- つまり**「CPIは重要」は、主に米国の話**でした
- 日本では、先に出る東京都区部CPI(3.7倍)のほうが、全国CPI(2.4倍)より効いています
何を測ったか
- データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティックと、同ソフトに付属する経済指標カレンダー
- 期間: 2023年8月25日〜2026年8月23日
- 測り方: 各国のCPIを、その通貨の対ドルペアで測ります(米国と日本は米ドル/円)
- 比べ方: ペアが違うので絶対値は比べられません。そのペアの平常時に対する倍率で並べます
- 対照: どの指標の前後30分にも入らない時間
中国だけ対ドルのペアが手元にないので、豪ドル/米ドルで測っています(中国の指標が最も効いたペア)。
結果:10倍以上の差がある
発表のその1分の値幅です。
| 国 | ペア | 回数 | 値幅倍率 | スプレッド倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 米国 | 米ドル/円 | 35 | 31.1倍 | 2.50倍 |
| カナダ | 米ドル/カナダドル | 55 | 16.8倍 | 1.58倍 |
| 英国 | 英ポンド/米ドル | 36 | 16.3倍 | 2.00倍 |
| NZ | NZドル/米ドル | 12 | 14.8倍 | 1.80倍 |
| 豪州 | 豪ドル/米ドル | 36 | 14.4倍 | 1.50倍 |
| スイス | 米ドル/スイスフラン | 36 | 9.9倍 | 1.44倍 |
| ユーロ圏 | ユーロ/米ドル | 35 | 3.5倍 | 1.00倍 |
| 日本 | 米ドル/円 | 36 | 2.4倍 | 1.83倍 |
| 中国 | 豪ドル/米ドル | 36 | 2.1倍 | 1.10倍 |
米国とユーロ圏で9倍、米国と日本で13倍の差です。
すべてピークは発表の分ちょうどでした。
ユーロ圏のCPIが弱いのは意外だった
ユーロ圏のCPIが3.5倍、しかもスプレッドは1.00倍で完全に無反応です。
これはECBの政策金利が9.1倍で最下位だったことと揃っています。ユーロ圏の指標は、発表の瞬間にはあまり動かないという共通の性質があるようです。
仮説を立てて、確かめて、半分外れた
理由の候補として、こう考えました。
先に部分的な数字が出ている国では、本番の反応が薄いのではないか。
ユーロ圏のCPIは、ドイツやスペインの速報が数日前に出ます。日本の全国コアCPIも、東京都区部のCPIが約3週間前に出ます。
PMIの確定値が速報の3分の1しか反応しなかったのと、同じ構造かもしれません。
測りました。
| 値幅倍率 | |
|---|---|
| 日本の東京都区部CPI(先行) | 3.7倍 |
| 日本の全国コアCPI(本番) | 2.4倍 |
| スペインの速報CPI | 3.6倍 |
| ユーロ圏のCPI(本番) | 3.5倍 |
| ドイツの速報CPI | 1.6倍 |
**日本では仮説どおりでした。**先に出る東京都区部CPIのほうが、全国CPIより効いています(3.7倍 対 2.4倍)。
**ユーロ圏では一貫しませんでした。**スペインの速報は本番とほぼ同じ(3.6 対 3.5)、ドイツの速報はむしろ低い(1.6倍)。
つまりこの仮説は、日本については支持されましたが、ユーロ圏については確かめられませんでした。
ユーロ圏のCPIが弱い理由は、別にある可能性があります。分かりません。
実務でどう使うか
- 米国のCPIは別格です。31倍です。ここだけは扱いが違います
- ユーロ圏と日本のCPIは、指標としては軽いという結果でした。米国の10分の1以下です
- 日本のCPIを見るなら、東京都区部のほうです。全国より効いていました。しかもこのカレンダーでは重要度が最低に設定されています
- カナダ・英国・NZ・豪州は16倍前後で、ひとかたまりです
- ただし平均コストという意味では、指標を避けても減りません。これは最悪値の話です
データの見方(方法と限界)
- 1つの配信元のデータです。ティックもカレンダーも同じソフトに付属するものです
- 各12〜55回です。NZは四半期ごとなので12回しかありません
- **ペアが違うので絶対値は比べられません。**平常時に対する倍率で並べています
- 同時発表は分離できません。「その国のCPIが出る枠」であって「CPIの効果」ではありません。特に米国はCPIとコアCPIが同時です
- **中国は豪ドル/米ドルで測っています。**対ドルのペアが手元にないためで、他国と条件が違います
- 「先に出るから薄い」という仮説は、日本でしか確かめられていません(上記)
- 3年分です。この期間、各国の金融政策の局面が違いました。インフレが政策の焦点だった国ほど効きやすいはずで、期間に固有の可能性があります
- 変動スプレッド系の配信です
まとめ
- 米国のCPIが突出(31.1倍)。カナダ・英国・NZ・豪州が14〜17倍で続く
- **ユーロ圏3.5倍、日本2.4倍。**米国の10分の1以下
- 「CPIは重要」は、主に米国の話だった
- 「先に部分的な数字が出るから薄い」という仮説は、日本では支持され、ユーロ圏では確かめられなかった
- 日本については東京都区部CPIのほうが全国CPIより効く
同じ名前の指標を、同じ重要度で扱ってはいけない、という結果でした。
出典
- 集計データ: ForexTester 6 の Advanced Data Feed が配信するティック(2023年8月25日〜2026年8月23日)と、同ソフトに付属する経済指標カレンダー(2026年8月26日取得)。集計スクリプトは自作
- 米国CPIの詳細: 米雇用統計と米CPI、どちらが荒れるか(当サイト)
- ユーロ圏の指標の性質: 中央銀行8行の政策発表を同じ物差しで測る(当サイト)
- 速報と本番の関係: 改定値は見る意味があるのか(当サイト)
- 重要度ラベル: 経済指標の「重要度」は当てになるか(当サイト)
- 中国の指標: 中国の指標はどの通貨に効くのか(当サイト)
- 平均コストとの区別: 指標を避けてもコストは1円も減らなかった(当サイト)
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引や指標の利用を推奨するものではありません。数値は集計期間における実測値であり、将来の結果を保証するものではありません。